おばあちゃん家
ゆめこのおばあちゃんは、北海道の海のそばに住んでいた。
ゆめこは、海が大好きなので、
おばあちゃん家に行くことが嬉しくてたまらなかった。
今年の夏もおばあちゃん家にやっと到着した。
到着するやいなや、海に行くことになった。
ゆめこの心は高鳴った。
海に到着すると、母から、海に入ってウニをとって、
海岸にいる家族一同に向けて投げる様に指令を受けた。
母は、ウニを勢いよく岩にぶつけて割って食べるのが好きだった。
もはや100年位前のことだから、
その頃は、ウニを勝手にとって食べても問題なかった。
ゆめこは、ゆめこが海に潜ってウニをとって海岸にいる家族一同に向けて投げると
ゆめこ自身はウニを食べられるのか、ちょっと不安もあったけれど、
小さいことは気にしないことにした。
早速、海に潜った。
海水が足先に触れて、冷たくて頭がキーンとした。
これ以上海に入るのを少し躊躇したけれど、
海岸で待っている家族にウニを投げる指令を受けているので、
より深く海に入ることを心に決めた。
海中深くに潜ってしまうと、不思議とだんだん寒くもなくなり、
魚やコンブや貝やウニがたくさんいてとてもきれいで嬉しくなってきたし、
海底には本当に竜宮城があって人魚姫が住んでいるなら素敵だと思った。
なんなら、人魚姫ならぬ人魚王子との偶然の出会いなんかもあるかもしれないと考えるとワクワクしてきた。
たくさんのウニがゴロゴロしていた。
紫ウニはトゲトゲが長くて、海岸へ投げる時に手が痛くなるので、
出来るだけ、トゲトゲが短いバフンウニを探した。
海中で夢中でウニ獲りをしていると、
どちらが海上が海底かわからなくなる時がたまにあった。
波が激しくなってきた。
ゆめこの体が波にさらわれそうになった。
ゆめこは、さらわれまいとして、とっさにコンブにつかまった。
両手、両足の全てを4本のコンブにそれぞれぐるぐる巻きに巻いて、
波が引くタイミングにあわせて、波にさらわれない様に「ハッ!」と気合を入れて、
祈る様な思いでコンブにしっかりとつかまった。
波の引きがおさまる瞬間に岸に向かって泳いだ。
これを何度も繰り返して、なんとか無事に岸にたどり着いた。
本当に、沖へ流されて死ぬかと思ったから、
岸へ戻ることが出来て、生きて帰れたことに
しみじみと感謝して呆然と立ちすくんでいた。
母が近づいてきて言った。
「ウニが足りないよ」
母という生き物は、最強だと痛感した。