YUMEKO-Happy diary

ゆめこ日記へようこそ♬ 記憶や妄想や空想が暴走。時には現実、時には夢、勝手な思いつきで、日々、自由に綴っていくつもり。

亡くなられた俳優さん

素敵な俳優さんが自殺された。
美しい瞳の、真面目で繊細で優しそうな、
キラキラした上品で崇高な感じの素敵な俳優さんだった。
生きる苦しみよりも、死ぬ苦しみを選ぶなんて、
どれだけ苦しかったのか・・・
 
ゆめこは、お会いしたこともない方なのに、
可哀そうでたまらなくて、ゆめこで良ければ
夜中でも朝まででも何度でも話を聞く位は出来たのに、とか
いや、ゆめこに話したところで、意味がないとか・・・
神様はなぜあんなに素敵な人をこんなに早く連れて行ってしまったのか、
いや、素敵だから神様が自分のそばに置いておきたかったんだ、
素晴らしい人はたいてい短命だとか・・・
 
もはや、ゆめこが考えてもどうにもならないと分かっているのに、
それでも一人で勝手に色々と考えずにはいられずに、
それはそれは、かつてない程に、落ち込んだ。
 
とんでもなく食いしん坊のゆめこが、
ごはんもおやつも食べられなくなり、
母に「お腹痛いの?具合悪いの?」と心配された位だ。
 
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亡くなられて、1週間後位の頃、
彼は、ゆめこの夢に登場してくれた。
 
信じられない程、ボロボロのマンションの7階に
彼は一人で住んでいた。
身なりは破れたボロボロの服を着て、ズボンの穴からお肌が見えていた。
築100年以上かと思われる程の古いグレーの階段しかないマンションで、
壁はひび割れ穴が開き外が見え、茶色いシミがたくさんついていて、
建物は傾き、窓ガラスが割れて、
そこから雨や風がたくさん入ってきて、少し寒かった。
スポンジがむしり取られたボロボロのソファの上の埃を手で払いながら、
彼は「どうぞ」と言った。
「ボロボロでびっくりした? 僕は、ここが好きでね。
ここでは一人になって色々なことを
ゆっくりじっくり考えることが出来るんだ。」
彼はそう言って、お茶を入れてくれた。
お茶は美味しくなかった。
「これは、何茶?」と尋ねると
「外に生えている雑草を洗って乾燥させたんだ、
ここでは天日干しが出来なくてね」
と彼は、はにかんだ様な笑顔で答えた。
 
そう言えば、ここではお日様を一度も見ていないことを、不思議に思った。
ここは真っ暗にもならず、いつも薄暗い、まるでずっと白夜みたい。
そう言えば、音もない。とても静寂な世界だ。
「いつもここで、一人でゆっくり本を読んでいるんだ。
やっと本を読む時間も出来て、今が一番幸せだよ」
 
生前の彼には全く似つかわしくない状況で暮らしているのに、
今が一番幸せって・・・
 
ゆめこは、幸せって何だろうと思った。
お金、愛、家族、仕事、友人、体力、健康、長生き、
自由、時間、家、車、宝石、ペット・・・
人それぞれだろうけれど、
この人は、呼吸が出来て、
人に邪魔されずにゆっくりじっくり考えることが出来る
一人の時間と空間が欲しかったんだなと思った。
今、一人の時間があって幸せだと思うのなら、
良かったんだよね・・・
楽になれたんだよね・・・
きっと・・・
 
生前のことを少し話してくれた。
「人気が上がる度に、これは自分ではないと思っていた。
周りの急激な変化に一番ついていけないのが僕自身の心だった。
やめてくれ、僕はそんな素晴らしい人じゃないんだ。
頼むから、みんなで僕をそんなに持ち上げないでくれ。
僕は自分に自信を持てたことは一度もないし、
自信を持つって、どうやったらいいのかも知らない。
だから、お願いだから、僕をそっとしておいてほしい。」
 
いつも、そんな風に思っていたなんて・・・
どこから見ても素敵すぎるのに
なんて謙虚・・・
 
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8月になって、ある俳優さんが、俳優業引退を発表した。
亡くなられた俳優さんは、俳優業引退とは言えなかったのかな・・・
言って欲しかったな・・・
生きてて欲しかったな・・・